息子の代まで続けられる仕事を

横井さん  一宮市森本の川沿いに横井一夫さん(七〇)の工場はあります。
 横井さんの仕事は、工業機械の防音カバーをつくること。「カバー」と言っても布などではなく、十畳ほどの大きな機械を覆う家のようなものです。横井さんのカバーで覆うのは、ボルトの上部、六角形になっている部分をつくる機械です。冷間圧造加工(ヘッダー加工)と呼ばれる金属を圧力だけで加工する機械は、稼働中、金属をぶつけるとても大きな音が出てしまいます。そのため、横井さんのつくる防音カバーが必要となります。

工業機械の防音カバー製作
 作業の流れは、発注された図面ごとに鉄を切ったり曲げたりしながら、組んでいきます。鉄板と鉄板の間には吸音材としてグラスウールを挟みます。防音の壁は厚さ十センチ以上になるものもあります。出来上がった壁には、赤茶色の錆止めをスプレーしていきます。「ボルトをつくるとき、大量の油をかけるから、錆止めが必要。錆止めを薄く塗っていくのも技術がいるんだよ」と横井さん。工場入り口の地面は、何度も何度も振りかけられた錆止めスプレーで赤茶色に染まっていました。
 四方の壁と屋根をつくるまでに一ヵ月がかかり、すべてをボルトメーカーの工場に運び、組み立てるのに三日ほどかかります。横井さんの工場には、材料を加工するための大きな機械たちと、それより更に大きな組み立て最中の分厚い壁が立てかけてありました。 友人と開業 今は息子と
 横井さんは学校を卒業後、名古屋市中村区の建設会社で働きました。その後、塗装や電気ボックスの製作など、様々な仕事を経験しました。「当時はひっぱられるままに、色々なところへ顔を出してきた。必要とされる場面がたくさんあり、経験を積むことができた」と横井さん。一宮で勤めた後、友人とともに現在の仕事を始めました。「友人の誘いがなければ、起業することもできなかったと思う」と当時を振り返ります。しかし、起業後すぐに共同経営者の友人が他界。いままでの経験と持ち前の粘り強さで現在まで仕事を続けていきました。そんな姿をずっと見てきた息子さんも今では一夫さんと一緒に仕事をしています。図面を見て材料を切り曲げ、組むのは息子さんと従業員の仕事、現場での組み立てを一夫さんの仕事と分担しています。「息子はほとんど休みなく仕事をしている。特殊な仕事だから、これからも長く続けられると思います」と息子さんとの将来を話していました。

横井製作所 横井 一夫さん(70歳) 住所 一宮市森本5丁目7番22号 電話 0586―72―6505


第181回 腕まくり指南
エネルギーと経済の本来の意味を考えるー節約概念からー

 鹿児島川内原発の再稼動、高浜原発の廃炉の延長など、「二〇三〇年の電源構成」で示された原発を「二〇~二二%」確保する方向にまい進しています。国は「資源のない日本将来のエネルギーに関するシンポジウム」を全国各地で開催しており、原発の再稼動を前提とした政策を国民に宣伝しています。福島第一原発事故の原因解明は進まず、事故責任も問われていません。福島では県内外に避難した住民がいまだに九万人をこえたままです。
 国政選挙でも、アベノミクスの評価に関する経済問題が大きく取り上げられ、「原発エネルギー」問題は、争点のひとつでしかありません。ここでは、原発を再稼動しなくても、大丈夫だということを見ていきます。
ECONOMY=経済とエネルギーについて
 経済の英訳であるECONOMYを調べてみると、節約、倹約、経済、家計、財政などがでてきます。ギリシャ語の語源では、「家の管理」となっています。私たちは、「家計を節約すること」が経済の本来の意味だと理解できます。エネルギー問題を経済の視点でみると、「エネルギーの生産を拡大することより、エネルギーを節約すること」が重要だといえます。
 二〇一四年の「わが国のエネルギーバランスフロー概要」を見ると、第一次エネルギー国内供給二〇〇五九(単位は一〇ペタジュール、水力・再可未活エネルギー一五七二、天然ガス五〇六三、石油八三〇六、石炭五一一七の合計)となっています。エネルギー転換・転換損失マイナス六五〇〇となっており、最終エネルギー消費は一三五五八となっています。二〇一四年時点は原発の発電量はゼロとなっています。今後のエネルギー政策は、原発再稼動の数字がはいることで、二〇〇五九の数字が増加ないし、石油、天然ガスなどの輸入を減少させる方向です。
 これが本来の経済=節約ということです。動力、発電、熱生産エネルギー損失が六五〇〇あり、この数字を三〇〇〇、二〇〇〇と節約することが可能ならば原発を再稼動させる必要はないし、再稼動のための新たなコストが発生し無駄なエネルギー生産ではないでしょうか。
 もうひとつ、グラフを見ます。現在の電力利用状況を見ると、事業用発電+自家用発電を合計すると七七七八+一一九一¥外字(935a)八九六九(一〇ペタジュール)です。使われている電力は三二九七で、発電損失および送配電損失が五六六五となっています。五六六五もの損失をいかに節約するのかが課題となります。石油などから発電する際の発電ロス、発電時に熱が生産されますが、その熱を損失しています。電気を送配電する過程でも大きな損失がでています。
 原発を再稼動し、今までどおりのエネルギー生産と損失を繰り返すのがいいことなのか、それとも、損失を節約するための新しい産業化につなげる道を開いていくのかが問われています。
本来の経済=節約を構築する
新しい産業の構築に向けて

 国は原発を再稼動する前に、エネルギー損失を最低限におさえる産業化を進めることが本来とるべきエネルギー政策であり、原発再稼動ありきの政策を進める国の方向にストップをかける必要があります。
 現在の水力発電、火力発電、原子力発電などの電気エネルギー生産は、大規模一極集中型が基本となっています。この大規模なエネルギー生産のあり方では、無駄が多く、エネルギーの損失が非常に大きくなっています。大規模エネルギー生産のシステムそれ自体が節約¥外字(935a)経済的になっていません。大規模エネルギー生産システムから小規模分散型のエネルギー生産システムを構築することが無駄を省くシステムになります。小規模分散の場合、生産と消費の距離が近くなりエネルギー損失をおさえるからです。
 半径一キロ程度で地域熱供給ができるコンパクトシティ(病院、老人介護施設など熱消費が大きい施設が集中している地域)などでは、木質バイオマスによる熱供給を行うことが必要です。ここでは木質ボイラー、木質チップ生産、木質チップ供給、地面を掘り返す工事、熱供給管設置の新しい仕事が生まれます。小規模分散のエネルギーシステムの構築は小規模ゆえに大部分が中小業者の仕事になります。
 エネルギー損失をプラスエネルギーに転換することも必要です。愛知県内を考えると、三州瓦の生産には大量に熱エネルギーが煙突から出ています。煙突から出ている熱エネルギーを小規模分散型で地域熱供給することが可能です。加えて節約をキーワードにした仕事を開発することが大切です。水の節約のために、雨水を回収するタンクの設置。リフォーム工事により体感温度を最適化するシステムが構築できます。原発を廃炉にするだけでなく、中小業者の「仕事おこし提案」を打ち出すことが重要です。