生活に息づくものづくり丁寧な仕事でまち中に信頼

 「プラネタリウムを作りたかった」そう話すのは、中川区一色新町で「㈲森熔接」を営む、森雅欣さん。熔接所を開業して二四年、地域に信頼される仕事を続けています。
 森熔接は可燃性ガスと酸素の混合で金属を熔接する「ガス熔接」や空気中の放電現象を利用する「アーク熔接」などさまざまな技術を活用しています。工場の入り口には、広い作業台が置かれ、ガスボンベや工具などが並んでいます。
 熔接をする物もさまざま。主に工業用の部品の熔接ですが、他にも衣料店の金属のポップや店の看板、中川区にある大型日帰り温泉施設の門構えなど、日常のいたるところに森さんの熔接が息づいています。
 全国中小業者決起集会に参加したときに、地下鉄の車内の蛍光灯を見て『あれ、自分が熔接した部品だ』と思いました。
プラネタリウムづくりから開業
 常に十社程から仕事が持ち込まれ、納期が重なることもたびたびありますが、丁寧な仕事としっかりしたスケジュール管理で取引先や地域からの信頼も厚く、民商会員から仕事の依頼もあります。
 自然が好きでものづくりが好きな森さんは、大学生の時に「自作のプラネタリウムを作りたい」と思い立ちました。縫製所やお好み焼き屋でアルバイトをしながら資金を貯め、独自の設計図を具体化しようと中川区の歯車やプラスチック加工工場、鉄工所をまわりました。そんな中、親戚の鉄工所に話をしたとき、「あんたフラフラしてないで、ここで働かないか」と言われ、鉄工所で働き始めることに。結局、訪問した先の工場ではプラネタリウムの部品をつくることができなかったため、日中は鉄工所の仕事をし、夜は自分で部品をつくる日々となりました。三年間鉄工所で働いた後、独立。二年後には申告の仕方を見直すため、民商へ入りました。
 「本当は学芸員とかになって、博物館にプラネタリウムや化石を展示したかった。なぜか二五年以上も熔接を続けています」と話す森さん。まっすぐにものごとに向き合う性格が長年仕事を続ける秘訣かもしれません。
 得意のものづくりは仕事だけに留まりません。「リーマンショックが影響して仕事が少なくなったときに作りました」と話す大きな機械は、鏡を細かく何十枚も配置して太陽光を一点に集中させ、食材を焼くもの。すべて森さんの手づくりです。縫製と熔接の技術を駆使して作られたプラネタリウムの天幕は、今年の民商まつりで大活躍しました。
 今年、名古屋西部民商の会長に就任した森さん。ますます忙しい日々を過ごす中で「結局、ものづくりが好きなんです。コツコツ仕事をしながら、これからも楽しく物をつくっていきたい」と笑顔で話していました。
㈲森熔接
森 雅欣さん(50歳)
住 所 名古屋市中川区一色新町2-2705
電 話 052-303-3647


 井内尚樹の腕まくり指南
第197回 財政は地域住民生活を「豊か」にするためにある―公共事業のあり方を考える1―
愛知県の財政力指数は〇・九二で東京に次ぎ二位となっています。県民に十分なサービスを提供できない財政状況では全くありません。しかし『統計で見る都道府県のすがた2017』を見ると、愛知県は中学卒業者の進学率は四七位で、全都道府県最下位となっています。一人当たりの幼稚園教育費は四五位、同じく小学校教育費四四位、中学校教育費四六位、高等学校教育費四六位となっています。
 もっと高校をつくれば「一五の春を泣かす」ことはないし、「人が輝くあいち」と言いながら愛知県知事ならびに県議会議員、県行政職員は「県がいかに県民の教育に対してお金を使っていないのか」を認識し、教育費を大幅に増額する必要があります。他方、教育費は全国最低レベルですが、トヨタのテストコースにみる一部大企業へのサービス、りんくうでの国際展示場など無駄な公共事業には大盤振る舞いです。今回は愛知県の無駄な公共事業について考えたいと思います。
名古屋市の国際展示場の問題と
2019年9月に開業予定の愛知県国際展示場問題
 「愛知県は国内初の国際空港隣接型展示場として、常滑市りんくう空港島に整備し、国内最大級の展示面積六〇,〇〇〇㎡、新たな交流・イノベーションの拠点として多様なニーズに対応する。コンセッション方式により民間事業者のノウハウを最大限に活用して運営する」としています。二〇一六年に竹中工務店が三四一億円で工事請負契約し、二〇一七年七月には六億円の補正予算措置がとられました。補正理由は天井高を一四mから二〇mに変更するからです。展示場建物に三四七億円ですが複合商業施設等の周辺施設と展示場をつなぐ連絡通路・歩道等上屋の整備費が何十億単位でプラスされると考えます。
 二〇一六年三月の名古屋市『大規模展示場の整備等に関する調査業務報告書(概要版)』を見ると、展示場の基本機能として「十分な階高と無柱の大空間の確保、来場者の円滑な誘導や搬出入庫の動線確保」を真っ先に指摘しています。天井高の確保は「少なくともステージ上部で高さ二〇m以上確保」となっています。現在の名古屋市のポートメッセ一号館を見た際、「展示品を積んだトラックが入ることができない搬入口の高さ」と最初の頃の『腕まくり』で指摘したように、天井高などの高さは展示場を設計する際、一番に考えなければなりません。表を見ると、荷物の搬出入口が低く、大型トラックでの搬入がしにくい一号館の利用率は約二〇%程度となっており、せっかく金城埠頭に第一号の国際展示場をつくったのですが、稼働率を見るとあまり利用価値のないものになっています。
 愛知県と竹中工務店との工事契約は二〇一六年一二月なので、県は名古屋市の三月の報告書をみる時間、天井高を考える時間は十分ありました。それなのに最初から天井高は考慮していませんでした。二〇一七年六月の補正予算措置でやっと二〇mへの天井高の高さ変更です。「愛知県はどのような展示場をコンセプトとして考えているのか」と県民から声があがって当然です。
 展示ホールAは天井高二〇mで無柱空間が一〇,〇〇〇万㎡です。展示ホールBは天井高が一四m、一〇,〇〇〇㎡×五(この五ホールは一体利用可能)となっています。もうひとつの重要な無柱空間がどの程度か、わかっていません。
りんくう空港島展示場の運営問題について
 「中日新聞」での報道では「最低売却額八億八二〇〇万円で、この額は稼働率を二五%と想定しており、当初五年間、赤字は県が補填する、六年目以降は想定収入を一五%以上下回った場合、県が赤字分を負担する。逆に一五%以上、上回った場合はその分を県に納めてもらい、想定額は五年ごとに見直す」となっています。名古屋市の展示場一号館の低い稼働率と同じ想定で、運営権の最低売却額を算出し、「赤字なら県が五年間補填し、それ以後も赤字経営なら県が負担してくれる内容」で展示場運営会社への特別待遇となっています。「国際展示場運営会社一社への大盤振る舞いでの税金投入よりも、県民への教育予算を大幅に増額してください」との声を大きくする必要があります。そして何より、県民の税金を一部の大企業に優遇させすぎており、県民を無視した税金の「私的利用化」の問題でもあります。名古屋市でも河村市長の「名古屋城木造化」にも「税の私的利用化」が問題としてでています。
 「赤字なら税金で負担しますよ」と行政から中小業者の皆さんに言ってくれるでしょうか。愛知県に中小業者の皆さんも「赤字なら税金で負担してください」と言いたくなります。財政の厳しい地方自治体が多くあるなかで、「豊かな」行財政のあり方が、県民不在だと声をあげるべきです。