ニーズに合わせた庭づくり

 自然と触れ合うことが好きで造園業をはじめた小玉直樹さん(四七)。
 自分の身長の二倍以上もある脚立をひょいと手軽に運ぶと、軽やかに脚立の最上段まで上り、さらに木の枝を伝い、軽々とてっぺんまでたどり着きました。
 「枝を切るときには、リズムが大切です。調子が悪いときもあって、そんなときはリズム良く切れません」と話す小玉さんのハサミからは、「バシッ、バシッ」と軽快な音が、庭一体に響き渡ります。
 小玉さんが造園業の職人を目指したのは、中学生の頃。「自然と触れ合う仕事に就きたい」と考え、農業高校に進学し、高校卒業後は、大きな造園会社に就職しました。会社は従業員も多く、仕事のほとんどが現場監督のような役割ばかりで、現場も公園の遊具の設置や土木、左官や塗装などが主でした。
 本来の自然と触れ合うという目的からは遠のいていると感じた小玉さんは、十六年間勤めた会社を退職。平成十七年に、個人で造園業を始めました。
 「仕事は必ず、お客さんのニーズに沿うようにやるよう心がけています」と話す小玉さん。しかし、個人宅の場合は「おまかせ」がほとんど。そんな時は、見た目はもちろん、将来的な管理がしやすいような配置や切り方を提案しています。
自然を感じる造園業
 木の種類によっても切り方はさまざま。ケヤキやイチョウのような落葉樹は、冬季はきつく切っても大丈夫ですが、ヤマモモなど暖かい地方の木を冬季にきつく切ってしまっては、それが原因で枯れてしまうことも。また、「木それぞれの体力を見極めながら作業することも大切です」と話します。
 気候に左右されるばかりか、かなりの力仕事である造園の世界。業界的には若い職人がなかなか続かないことが課題だと言いますが、自然の移り変わりを肌身に感じられるのは造園の魅力です。
 「以前は越冬出来ない虫が、最近では冬でもゆっくり動いているのをみつけると、地球温暖化を感じたりします。めずらしい植物を見つけたら、どうやって手をかけてやろうかと考えたり。新しい発見が多くて面白い仕事です。自分のペースで仕事ができるので、今後も続けていきたいです」と笑顔で話していました。
こだま造園 小玉 直樹さん(47歳) 名古屋南民主商工会会員


 井内尚樹の腕まくり指南
第198回 リニア実験線跡地利用とピーチライナー後処理を考えるー「無駄な」公共事業のあり方を考えるー2ー
日本経済の先が見えない問題はどこにあるのかー「脱炭素」と「低炭素」の分岐点ー
 皆さん、新年おめでとうございます。安倍首相は年頭記者会見で「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかり提示し、改憲に向けた議論を一層進める」と述べました。二〇一八年は憲法改正への動きの正念場となりそうです。中小業者の営業と暮らしは、平和でこそ成り立ちます。
 「憲法は国民が権力を縛るためのルール」です。先月の憲法に関する世論調査でも、「改憲に反対」が五三%、「改憲の国会論議を急ぐ必要はない」が六七%、「九条改憲の必要はない」が五三%です。国民が「権力を縛るルールをかえる必要はないといって」いるのは明らかです。
 国、地方自治体は「改憲の動き」などではなく、「国民生活が豊かになるため」の政策を実施する必要があります。前回に引き続き、公共事業のあり方を考え、無駄だと批判するだけではなく有効活用を考えます。
宮崎リニア実験線の跡地利用について
 九州の自然エネルギー調査中に宮崎県都農町を通った際、写真に見る光景が目にはいってきました。リニアモーターカー実験線跡の高架上に太陽光パネルを並べたものだとわかりました。宮崎県は二〇〇九年に「宮崎ソーラーフロンティア構想」を打ち出し、太陽光パネル製造・発電・活用の三拍子揃った太陽光発電の拠点づくりを目指しました。
 宮崎県・都農町はパートナーシップを国際航業グループと結び、「宮崎ソーラーウェイ」プロジェクトがスタートしました。二〇一〇年に都農第一発電所がリニアモーターカー宮崎実験線の跡地の二六〇mを利活用するかたちで発電が開始されました。
 宮崎実験線は山梨県とともにリニア実験線として、鉄道総合技術研究所とJR東海が開発しているリニア研究施設として建設されました。
 一九七七年に開設された宮崎実験線は、一九九六年まで走行実験が行われました。宮崎実験線は単線で列車のすれ違い実験ができない、直線なので曲線、勾配がない等の理由で、山梨実験線に引き継がれることになりました。
 その後、宮崎実験線は東北大学の研究グループが走行試験を行っていましたが、ほとんど利用されない実験線でした。無用の公共物にはなりませんでした。第一発電所に続き、二〇一一年には都農第二発電所を宮崎実験線高架に約三・六kmに建設し、一MW(メガワット)のメガソーラー発電所で、約三〇〇世帯の電力をまかなえる規模です。
愛知県のピーチライナーを例にー無用の長物を地域資源として利活用する必要性―
 新交通システム桃花台線は名鉄小牧駅と桃花台ニュータウンの七・四kmを結ぶ路線で、資本金三〇億円で愛知県一三・八億円四六%、小牧市三億円一〇%、残りは名鉄などの地元財界の出資による第三セクターとして出発しました。資本金に加えて、愛知県より運営資金として、三〇億円が貸し付けられました。
 二〇〇五年三月の「桃花台線あり方に関する提言」を見ると、利用者数について、開業当初で一日五〇〇〇人、将来は一万二〇〇〇人程度と見込んでいました。開業直後は一日約三三〇〇人でしたが、JR高蔵寺駅行きのバス路線が開通したこともあり、減少傾向が続きました。
 「過大な公共事業」のための「過大な乗客数予測」は建設前から言われていました。「桃花台線は一九九一年三月に開業して以来、赤字が続き、二〇〇三年末には累積損失額が六一億円に達しており」、厳しい経営状況が続きました。ついに、二〇〇六年一〇月に新交通システムの運行廃止、第三セクターの解散も決定しました。最終的な累積赤字は約六五億円、債務超過額は三五億八四五二万円となっています。
 県民の足を守ることは公共交通の役割として非常に重要なことだといえますが、赤字をいくらでも垂れ流してもいいはずはありません。「公共物」を住民が要望し、住民が自らの足として新交通システムを利用していく姿が理想だといえます。住民の民主主義的力量を培っていく「民力培養型」公共事業が大切です。
 「提言」では、「桃花台ニュータウンの周辺地域は、自動車中心の交通体系となっており、桃花台線の開業以降も乗用車からの転換はあまり進まず、乗用車の利用が圧倒的に多いままである」としていますが、現在はニュータウンが高齢化段階に来ており、「自動車中心」は限界にきています。
 「桃花台線を廃止し、構造物を撤去する場合、工事概算額は約一〇〇億円」としています。ピーチライナーの高架は一部分が撤去されました。あとは無用の長物として残ったままです。宮崎実験線跡地利用を見ると、私たちは、ピーチライナーの高架を地域資源として利活用する政策をもっと多面的に検討する必要があります。  (いのうち・なおき)