『おしゃれへのこだわり 流行読み取る鋭い目』

【働く街におしゃれな人を】
   JR刈谷駅北口の相生町にメンズ服のセレクトショップ「メンズアイオイ」の店舗を構える山口一行さん(六五)。テーラー(仕立て屋)だった父親から店を引き継ぎ、今年で創業四一年目になります。店内には、シャツやジーンズなどのカジュアルな商品が並び、外からの光も差し込み、カフェの様な明るくおしゃれな雰囲気のお店です。
 一階部分が店舗、二階部分が作業場となっています。作業場の中央には一メートルほどの大きな作業台があり、それに隣接するようにデスクとミシンが設置され、壁の棚に色とりどりのミシン用糸、手元に裁断用のハサミ、寸法を測るメジャーなど、様々な道具が置いてあり、いかにも洋服屋さんという印象を受けます。
 山口さんは、東京と名古屋のお店で五年間修業し、接客や服を作る技術、流行りを見抜く目を磨いていきました。
 おしゃれが大好きで、仕立て屋だった父親を見様見真似で、自分でデザインした服を自作する事もありました。
 父親から代を引き継ぐと同時に、「これからは既製品の時代だ」と世間の流れを読み取り、営業体系を変え、刈谷市に本社を構える「デンソー」や「アイシン」などに勤める若い男性をターゲットにしたファッションを揃えていきました。

 【世代を超えリピーター多く】
 「刈谷の街におしゃれな人を増やしたい」と、セレクトショップに変えた現在も、山口さんがスーツの補修やオーダーメイドの受注を行っています。
 「昔のお客様が息子さんを連れてくる事もある、父親の代から通ってくれるお客さんもまだいます」と話します。
 個性的なお店は評判が良く、「遠方からネットで調べてきてくれる人がいるよ」と嬉しそうに語ってくれました。
 店内は若い男性向けのファッションが中心ですが、「最近では同じテイストのレディースも評判が良いです」と山口さん。

【流行りを発信する商品選びを】
 現在、接客は店長とスタッフに任せ、山口さんは、オリジナル品製作や衣類の困りごと相談でお店に来る方の対応をしています。
 最近では店内に置いてある商品の九割が店長のセレクトだと言います。「うちの店は二十代、三十代を対象にした品ぞろえが中心です。ファッションは生き物だから、若い店長の感性で選んでもらった方がいい。一割くらいは僕の選んだ服や自作の商品を置いている」と話します。
 山口さんは、これからの展望について「嫁いでいった二人の娘が、この店を引き継いでくれたらうれしいかな。店長を任せている子も、独立するなら背中を押してあげたい」と笑顔で語ってくれました。

メンズアイオイ
山口 一行 さん
 住 所 刈谷市相生町2-24
 お店ブログ http://kariyaaioi.blogspot.jp/
 電 話 0566-21-7155


 『Dr.inouchi 井内尚樹のシリーズ腕まくり指南 第203回「ギッシングモデル」から「漏れバケツ」理論の補強による循環型地域経済の構築に向けて』
 枝廣淳子(2018)『地元経済を創りなおすー分析・診断・対策』岩波新書で、枝廣氏は最初に、「京都大学と日立とがAIを活用した共同研究を行い、今後の地域の持続可能性についてのシナリオ」を紹介しています。「都市集中シナリオ」と「地方分散シナリオ」の2つに大きく分かれ、今後10年がその分岐点となると指摘しています。地域が持続可能となるのは今の東京一極集中型のシナリオではなく、「地方分散シナリオ」と論じています。
 私はドイツ、オーストリア等の自然エネルギー生産による地域経済の自立化を踏まえ、東北大震災と福島原子力発電所事故を見て、考え方を変えました。本誌で一貫して強調しているのが、地域資源を利活用しながら自然エネルギーを地域自らで生産し、小規模・分散・分権ネットワークによる循環型地域経済の構築です。今このシナリオを支持してくれる人たちはあまりいませんが、人間ではなく人工知能であるAIが「地方分散シナリオ」である小規模・分散・ネットワークを支持するとは、時代の進化を感じます。
 以下では、再度オーストリアのギッシングモデルを見て、このモデルを補強してくれる枝廣氏らの「漏れバケツ」理論を見ます。
 【オーストリアのギッシングモデル ーエネルギーの地域外流出を食い止めるー】
 資本主義国オーストリアと「社会主義」国ハンガリーとの国境沿いにギッシングは位置しています。鉄のカーテンでしきられた地域なので、西側軍隊の駐留、国境警備隊がいるだけで、地域産業を発展させることはできませんでした。1989年のベルリンの壁の崩壊とともに、ギッシングには、鉄のカーテンがなくなり、軍隊もいなくなりました。ギッシングの地域産業をどう構築・発展させるのかが課題となりました。
 雇用も、産業もない地域で考えられたのが、地域外に出て行くお金を防ぐことでした。車のガソリン代、お湯の給湯、暖房の重油代、電気代などは、化石燃料代として、中東などの外国から購入している。このエネルギー代金の地域外流出を止めれば、産業がない地域でも、お金が地域内循環すると考えられました。実際、外国から購入している化石燃料代金3500万ユーロを地域内で全て生産することにしました。地域資源として森林資源が豊富にあり、これを利活用して木質バイオマス熱供給・発電、地域熱暖房供給、鳥糞による発電、太陽光・熱発電など様々なエネルギー生産を行い、世界で最も有名な、「自然エネルギー生産」地域になりました。
【「漏れバケツ」理論について ー地域内産業連関表の利用ー】
 図を見ると、地域経済をひとつのバケツと考えます。地域には企業誘致、観光収入、国などからの補助事業などでお金が入ります。地域経済に入るお金を「潤す水」と考えます。地域に「水」がたくさん入ったのですが、実際は、バケツからたくさん漏れる場合があります。例をあげると、公共事業で建設事業を受注しても、地域外の業者が建設すれば地域外にお金が漏れていきます。多数の観光客がきても、地域外で作られた土産を買ってしまえば、地域外にお金が漏れます。
 企業誘致に関しても、「イギリスのあるトヨタの工場で240社から部品を調達しているのですが、地元の業者は5社しかなかった。スコットランドの電機メーカーも同じで、地元製のものは12%にすぎなかった」と紹介しています。工場を誘致したことで、従業員の給与、部品購入代金など地域内にお金を引っ張ってきたのですが、部品代金として支払うときにあっという間にお金が地域外に出て行ってしまいます。ギッシングモデルと同様に、地域外に漏れているものの非常に大きな部分として、エネルギー代金の地域外支出も指摘されています。
【「漏れバケツ」理論でどのように補強していくのか】
 地域外に漏れでているお金を地域産業連関表で個々具体的に明らかにする必要があります。地域外に漏れでている分野を地域内で中小業者が新規開業することが重要です。
 そのためには、第一に、地域資源の利活用により自然エネルギー生産を地域内で行うこと。その他の例をあげると、学校給食でたまねぎが地域外からの調達となっているとします。地域内の休耕農地でたまねぎの生産が可能ならば、地域内でたまねぎ農家を事業として創出できます。地域内でパン屋がなければ、パン屋創業のコンテストを開催し、プレゼンを検討し、ユニークで若いパン屋さんを地域内で出店できます。
 このように、地域外への漏れを防ぎ、足りない仕事分野を地域内で創出し、地域経済循環を構築していくことが必要です。